2018年7月16日月曜日

フランスの堅守速攻がW杯を制する 4-2クロアチア


 決勝前半フランスのシュートは1本。PKで2-1とリードした時点ではシュート0だった。逆にクロアチアは手数をかけ攻め、巧妙なFKから1-1に追いついた。 しかし、エムバペという功速なスペシャリストを活かして簡単に試合をひっくり返した時点で勝敗は決まっていた。
モドリッチの頭脳的なプレーにカンテが機能しなかった
クロアチアも用意周到でモドリッチはカンテから離れて低い位置からプレーでカンテの頭越しパスを何本も通していた。 フランスの監督のデシャンは後半早々カンテから高さのあるヌゾンジを投入してその穴を埋める。 モドリッチはポジションを上げボールを支配しボールをDFラインの裏を突くがフランスの堅守を破ることができない。 逆にモドリッチをサポートするラキティッチとブロゾビッチが前がかりになったところをポグバに奪われ再びエムバペに振り回されて最終ライン前にできたスペースに走りこんだポグバに決められた。 
 疲労困憊のクロアチアはモドリッチを中心にボールを支配し素晴らしい攻撃をしたが、若く才能あふれるタレントをチームとしてマネージメントしたフランスの監督デシャンの前に屈した。
 攻撃をコントロールするグリーズマンはアトレチコでも好守に献身的。それを見ているポグバやエムバペも傲りがない。 若いCBのウムティティやバランも守備だけではなく、セットプレーでは大きな武器になっている。 突出しているのはやはりエムバペ、単に速いだけでなく上手さも持ち合わせている。決勝の4点目も右のインサイドで巻くシュートの姿勢からストレートのシュートにとっさに変えている。 GKのスバチッチも完全に逆をとられて全く動けなかった。 メッシ、Cロナウドに並ぶの逸材になるだろう。 リーグアンで1強のPSGにいるのは少々もったいない。
一瞬でシュートのコースを変えるエムバペ DFもGKも逆を取られた
決勝までのフランスの結果は
2-1オーストラリア、1-0ペルー、0-0デンマーク
4-3アルゼンチン、2-0ウルグアイ、1-0ベルギー
4-2クロアチア
無得点で終わった試合は堅守のデンマーク戦のみ。しかし、この試合は6人を入れ替えてポグバ、エムバペは先発メンバーではなかった。 メッシのアルゼンチンもフランスの堅守速攻に沈んだ。ベルギーも堅守を崩すことができなかった。

ベスト8から振り返ってみた

W杯はベスト8が一番面白いということもあって全てTV生観戦して生活のリズムが崩れてしまったが、今大会は日本がトーナメントに進んだということもあってけっこうしっかり見てしまった。 放送時間も完全な深夜の3時という試合もいつもより少なくて多くの人が日本以外の試合を見たようだ。 私の周りのサッカー初心者の人もその話題が多かった。 とりあえず試合の感想
3rdPLACE
ベルギー 2-0 イングランド
前半早々にカウンターからベルギーが得点すると、イングランドは引いたベルギーの守備を崩せない。アザールもいつも対峙しているプレミア選手相手に、ドリブルでは崩せなかった。疲れもあると思うが今までと勝手が違うという感じがした。イングランドは後半ラシュフォードとリンガードを投入してチャンスを多く作ったが、ベルギーからゴールが奪えなかった。
 この実況はテレビ朝日だったが、実況でやたら「高速カウンター」という言葉を連発していて五月蠅かった。日本の専門誌専門チャンネル以外のメディアはもっとサッカーを勉強しないと知識の底の浅さだけが目立つことになる。解説の松木とゴンちゃんも日本戦以外の試合には適していない。

SF クロアチア 2(1-1)1 イングランド
モドリッチは気合が入りすぎて開始早々イングランドにFKを与えてしまって失点。それでもモドリッチは縦横無尽に精力的にプレーした。68分にベリシッチが足をの伸ばして待望の同点弾。南米のチームだったら、危険なプレーだとアピールして試合が中断したかもしれない。 延長に入りマンジュキッチが逆転のゴールを挙げて、イングランドを振り切った。 セットプレーを得点源にするイングランドの守備は堅かったが、徐々に左右を使うクロアチアにDFラインを下げられて効果的なカウンターもできなかった。最後は集中が途切れたという感じだった。 それにしてもクロアチアは3試合で4試合分戦っている。 こうなるとクロアチアに優勝させてあげたい気持ちになる。

SF フランス 1-0 ベルギー
 両GKの好守で試合は面白いものになった。フランスはエムバペを活かす為に引いて守って速攻をかける形をしていたが、ベルギーは上手く対処していた。 フランスのカンテの動きを見ていたが、守備でのスペースの消し方は上手い。フランスがもっと前線から守備をしていればもっと目立った存在になったかもしれない。そのカンテでも止められないアザールは凄い。 この試合は決勝で見たかった。

QSF ロシア 2(3PK4)2 クロアチア
 開催国ロシアは驚くほど走って、その運動量で相手を地獄に落とし込む。PK戦で勝ち残ったクロアチアはラキティッチの元気のなさが気になる。モドリッチは攻守に精力的だった。2試合連続のPK勝ちのクロアチアに力は残っているのだろうか?

QSF スウェーデン 0-2 イングランド
 スウェーデンは大柄選手が揃っていて、プレーのリズムが違う。ボールを蹴る、止める、運ぶという足元の技術もしっかりしている。ワンプレーの動きが大きく、高さを使われたらとてもやりづらい相手だ。守備ラインをしっかり配置し、シュートブロックは逃げないで確実に当てにくる。 イングランドはセットプレーからの得点が多く、この試合でもスウェーデンの高さを超える高さで得点した。

QSF ブラジル 1-2 ベルギー
 攻守が目まぐるしく変わる好ゲーム、ブラジルのオウンゴールが無かったらブラジルが勝っていただろう。クルトアは好セーブ連発だったが、ブラジルはシュートまで手数がかかっていてベルギーDFを崩せなかった。

QSF フランス 2-0 ウルグアイ
 フランスはFKからヴァランが決め先行。試合を優位にすると後半グリーズマンのミドルをウルグアイGKムスレラは弾ききれなかった。カバーニ欠場のウルグアイは最後までフランスの守備を破れなかった。

2018年7月4日水曜日

日本のW杯終わる 世界で戦えるGKの育成を

ポーランド戦の敗戦を無駄にしないためにも、ベルギー戦は勝たなければいけなかった。
 
 ベルギー戦前半、立ち上がり15分は日本ペースだったが徐々にベルギーにサイドを使われるが、日本の右サイドはアザールに翻弄されながらも酒井宏樹、原口が食らいつていた。左サイドは乾がメルテンス、ムニエにボールが入る前にプレスを掛けられる位置にポジションをとってケアしていた。 乾はエイバル入団当初守備が全く駄目だったが、昨シーズンはずいぶん上手くなったと思った。 後半の1点目はそんな乾のパスカットから生まれた。 柴崎の絶妙な縦パス、原口の長い距離のランニングとシュート前のキックフェイントで名手GKクルトアもタイミングがずらされた。

 4分後、再び乾から大迫へのクロスをコンパニーにカットされるが、セカンドボールを拾った香川が乾へパス(香川は浮いたボールの処理が上手い、相手が寄せきれないでついてくるところで裏にパスを出す、日本代表で好調な香川は久しぶりにみたような気がする)、乾は香川が作ったスペースでのミドルシュートを鮮やかに決めた。クルトアの茫然とした表情が印象的だった。

 今まで、力まかせにミドルシュートを打つ選手はいたが、乾のようなコースをしっかり狙えてミートする日本の選手はいなかった。乾の場合は走りながら足元で吸収するトラップができるのでワンタッチでボールを受けられる。しかし左サイドでも右足でのタッチが多いので、守る方も足を出しやすいので、中盤に降りてボールを受けて前にボールを進めるときに引っかかるケースが多い。 1,2戦目でもそういうシーンが5回くらいあった。相手から遠い左足がもっと使えればもっと危険な選手になれる。 このポジションは中島も優れているのでW杯には連れて行って経験を積ませたかった。

 2点目の得点シーンが52分というのも時間的にはちょっと早すぎたような感じがした(ちょっと贅沢だが)。逆に3点目が取れれば試合を決めることができるとも思ったが、その前にフェライニ、シャドリを投入されてしまった。 特に高さがあるフェライニへのマークには守備が混乱していた。

 失点は日本の最大のウィークポイントから生まれてしまった。CKキックからのヘディングされた浮き球を川島がパンチするが、それがペナルティエリア内の乾の前にこぼれて、乾ははっきりしない高い浮き球を上げてしまう。酒井宏樹が寄せきれずフェルトンゲンに頭で中に入れられてしまう。 川島としてはクロスを想定していたが、ボールを見送ってしまう。クルトアだったら、なんとかボールを外にはじき出していただろう。その前に浮き球のパンチはもっと遠くにできていただろう。
 この失点がすべてだった。 ここさえ守り切れていれば日本は3点目を狙いながらも、守り切ることができただろう。 すべてはこの一点で流れが変わってしまった。

日本にとっては世界で戦えるレベルのGKの育成が必要
 川島が悪いというのではない、テストマッチで中村、東口がチャンスを掴めず互いに失点してしまった。彼らのミスではないにしろ、ここで奇跡的な守備をしていればどちらかが正GKで本戦に立っていたことだろう。 最終的に経験のある川島が選ばれただけ。 
 JFAもGKの発掘や研修をやっているが、なんせ海外と違ってGKは守備の要としてしか見られていないから、優秀な人材が育っていない。 また、ハリルが言っていたように大型のGKが日本にいないのも最大のウィークポイント。 U-20には大きなGKを揃えているが、先日のツーロン国際を見る限りまだまだ経験不足で2022のカタール大会に間に合うかどうかだろう。 また、所属するチームによっても成長はちがってくる。 Jリーグも悪くはないが、厳しい海外で活躍できているかどうかの経験はこういう国際舞台では絶対に必要になってくる。 攻撃の起点になり世界の舞台で戦えるGKの育成は日本サッカー界の急務。

2018年7月1日日曜日

西野監督は名監督なのだろうか? 単なる策士なのか?

 ポーランド戦後、戦い方の美学・スポーツマンシップ・規律とか当時者でないものが、いろいろと語りすぎる。多分目の前で起こっているのものが、我々が望むものと違ったからだと思う。そういう私も試合中はそう思っていた。 もし、セネガルが点を入れたらどうするのだろうか? と....

ちょっと視点をかえてみた。
 優れた監督とか社長とか、優秀な責任ある立場の人たちは部下を成長させ、成果を出すことを常に考えている。そのためには、次に起こることを想定していて働いているものである。 我々愚民は目の前のことしか考えられないし、その結末がどこにあるか理解していない。 玉砕戦法では最悪の結果を招きかねない。それは決して美学ではない。

 西野監督は電撃交代の任を受け、チームを再構築してすでにW杯3連敗予想を覆している。そして次のトーナメントを視野に入れてのポーランド戦だった。 2010年のトーナメントのパラグアイ戦では、日本の選手にはすでに戦えるだけのスタミナは残っていなかった。 当時の監督岡田氏は「攻めたかったけれど、カウンターを食らって負けるのが想定できるほど日本の選手は消耗していた」と言っていた。我々は冷房のある部屋で消耗せずただ「どうして攻めないのか?」と歯がゆい気持ちでいた。 現場はギリギリの戦いをしていたのである。

 過去の反省を顧みて、今回はギャンブルに出たと思っている。 監督として、次を見越しながら新たな6人を先発として送り込んだ。控え選手に出場機会をあたえ、バックアッパーとして機能させつつ、選手を休ませ戦力を整える作戦だ。
 ポーランド戦は新たな選手で引き分け以上の結果を想定したのだろうが、それは上手くいかなかった。 しかし、コロンビアがリードしたことによって更なるギャンブルに出て、結果をだした。 あまり褒められた方法ではないが、批判を承知でやったことだと思っている。

 トーナメントは1発勝負、そして多くの選択肢を持った国が勝つ。選手層の薄い国は1つは勝てるがその先では敗戦する。 日本の選手の底上げをするには、トーナメントで戦えるだけの戦力としてはあまりにも薄いが、1つ多く戦えればそれだけ選手は経験を積んで上手くなる。 トーナメント進出というノルマを達成しつつ、戦力を整えた西野の勝負強さには脱帽するしかない。 しかも、このことによって選手は更に成長するだろう。 強豪ベルギー戦は総力戦である、休養十分な相手に対して消耗した選手では戦えない。これが、監督の仕事だと思う。W杯前西野監督にはあまり期待していなかったが、なかなかの策士だった。 ベルギー戦に勝って駒を進めることになったら名監督と言われるに違いない。
 
 残念なことに、ポーランド戦の先発をマスコミが記事にしてしまった。W杯は国を挙げての情報戦でもある。それを日本のマスコミはわかっていない。 リーク記事をあげることが仕事だと思っている日本のマスコミは真実の姿を追求する力はないのだろうか? 残念ながらそういう意味では、日本はまだまだW杯で戦えるレベルではない。